英語を使えるようになるためには、単語や表現を覚える必要があります。

残念ながら、一度も覚えていない英語が、必要なときに自然に口から出てくることはありません。

しかし、英語を話せるようになるために、分厚い単語帳を最初から最後まで暗記する必要もありません。

特にビジネス英語では、仕事で使う語彙や表現がある程度決まっています。

英語を全部覚えようとするのではなく、自分の仕事で使うものから覚える。

これが、仕事で使える英語を早く身につけるコツです。

英語全体ではなく、自分の仕事に必要な範囲を覚える

英語には、膨大な数の単語や表現があります。それをすべて覚えようと考えれば、途方もない話に感じるでしょう。

しかし、実際の仕事で毎日使う英語は、それほど広くありません。

製造業であれば、品質、数量、納期、在庫、工程、安全など、話題は自分の業務に集中します。メールでも、依頼、確認、報告、催促、謝罪など、繰り返し発生する場面があります。

使う場面が限られているため、同じ単語や表現が何度も登場します。

私も長年英語を使って仕事をしてきましたが、毎回まったく新しい英語を作っているわけではありません。過去に使った表現を、相手や製品、数量、日付などに合わせて少し変えながら使っています。

ビジネス英語が日常英会話より取り組みやすい理由は、ここにあります。

たくさん触れ、たくさん使えば、必要な英語から残っていく

何を優先して覚えればよいのか、最初から正確に判断するのは簡単ではありません。

そこで大切になるのが、できるだけ多くの英語に触れ、実際に使うことです。

海外から届くメールを読む。英語の会議に参加する。資料やチャットを見る。自分でも短いメールを書き、会議で一言発言してみる。

こうした経験を重ねると、同じ単語や表現に何度も出会うようになります。

  • 「この単語を、また見た」
  • 「この言い回しは、前の会議でも使われていた」
  • 「この表現は、自分の仕事でも使えそうだ」

このように繰り返し目にするものは、その仕事で使われる頻度が高く、自分にとって必要性の高い英語です。

すべての単語を同じように覚えようとする必要はありません。一度しか見ない難しい単語より、毎週のように目にする単語や表現を優先します。

高い頻度で目にする英語は、前後の状況と一緒に理解できるため、意味も推測しやすくなります。さらに、自分で使えば、記憶に残る力は一段と強くなります。

つまり、仕事の中でたくさんの英語に触れること自体が、自分に必要な英語を選び出す仕組みになります。

たくさん触れる。何度も目にする。自分でも使う。通じた表現を、もう一度使う。

この繰り返しによって、使用頻度の高い単語や表現から自然に身についていきます。

知らない単語を見つけるたびに、すべて暗記しようとしなくても構いません。何度も現れるものから覚えていく。それが、自分の仕事に合った英語を効率よく増やす方法です。

必要に迫られている人は、英語を習得できる環境にいる

仕事で英語を使わなければならない状況を、大変なことだと感じる人は多いと思います。

私自身も、最初から英語が得意だったわけではありません。しかし、仕事で英語を使う必要に迫られたからこそ、覚えた表現をすぐに試す機会がありました。

今日覚えた表現を、明日のメールで使う。会議で聞いた言い回しを、次の会議で自分も使ってみる。相手から届いた英文の一部を保存し、自分のメールに応用する。

このように、覚えることと使うことがつながっていると、英語は定着しやすくなります。

英語を使う必要があることは、負担であると同時に、習得できる大きなチャンスでもあります。

単語だけでなく、使える形で覚える

単語帳で単語と日本語の意味だけを覚えても、実際の仕事では、どのような文章にすればよいのか迷うことがあります。

そのため、私は単語だけでなく、短い文章や表現のまとまりで覚えることを勧めます。

たとえば、confirmという単語だけを覚えるのではなく、次のような形で覚えます。

  • Please confirm the delivery date.
  • Could you confirm the quantity?
  • We would like to confirm the following points.

この形で覚えておけば、delivery datepricescheduleに変えるだけで、別の場面にも使えます。

難しい長文を丸暗記する必要はありません。自分が口に出せる、短くて使いやすい文章を覚えることが大切です。

仕事で出会った表現を、その場で真似して使う

仕事英語の材料は、書店で販売されている教材の中だけにあるわけではありません。実際の仕事では、自分に必要な英語が毎日のように目の前へ現れます。

海外の上司や同僚から届いたメールを読む。会議で繰り返し使われる言い回しを聞く。仕入れ先から届いた、わかりやすい英文を見る。

その中で「この表現は使えそうだ」と思ったら、次のメールや会議で自分も真似して使ってみます。

体系的な例文集を作ったり、すべてを細かくメモしたりしなくても構いません。たくさんの英語に触れていれば、本当に必要な表現には何度も出会います。

何度も目にし、自分でも繰り返し使う表現から、少しずつ自然に身についていきます。

詳しい考え方は、ビジネス英語はお手本のメールを真似ると上達するでも紹介しています。

覚えた表現は、早いうちに一度使う

表現を見つけて意味を理解しただけでは、まだ「知っている英語」です。

仕事で使える英語へ変えるには、自分で一度使ってみる必要があります。

メールで使う。チャットで使う。会議の前に声に出す。オンライン英会話やAIとの会話で試す。そして、できれば実際の仕事で使います。

相手から必要な回答が返ってきた。依頼した行動を取ってもらえた。会議で自分の意図が理解された。

この「通じた」という経験によって、覚えた表現が強く記憶に残ります。

覚える → 使う → 通じる → 記憶に残る → また使う

一度で完全に覚えられなくても構いません。同じ場面が来るたびに調べ直し、もう一度使えばよいのです。

この循環については、英語は「通じた!」で定着する|知っている表現を使える表現に変える方法で詳しく説明しています。

忘れることを恐れない

覚えたはずの表現を忘れると、「自分には英語の才能がない」と感じることがあります。

しかし、一度見ただけの表現を忘れるのは当然です。重要なのは、忘れないことではありません。必要になったときにもう一度調べ、再び使うことです。

同じ表現を仕事で何度も使ううちに、少しずつ調べる回数が減っていきます。やがて、考えなくても自然に出てくるようになります。

仕事で頻繁に使う表現は、仕事そのものが復習の機会を作ってくれます。だからこそ、最初から広い範囲を覚えるより、自分の仕事で繰り返し使う表現に絞る方が効率的なのです。

AIで、自分専用の例文を作る

今はAIを使って、自分の仕事に合った例文を簡単に作れます。

たとえば、日本語で状況を説明し、次のように依頼できます。

海外の仕入れ先に、納期の再確認をしたいです。英語が苦手な人でも口に出しやすい、短い英文を3つ作ってください。

作られた英文が難しければ、さらに短くしてもらいます。

大切なのは、AIが作った英文を眺めるだけで終わらせないことです。自分が理解できる表現に直し、声に出し、実際の仕事で使います。

AIは、英語を覚えなくてもよくする道具ではありません。自分に必要な英語を絞り、覚えやすくしてくれる道具です。

仕事で使える英語は、必要な表現の積み重ねでできていく

英語を習得することに、魔法のような近道はありません。

しかし、英語全体を覚えなければ仕事で使えない、ということでもありません。

自分の仕事で必要な表現を一つ覚える。実際に使ってみる。通じた表現を、繰り返し使う。

この積み重ねによって、自分の仕事に必要な英語の範囲が、少しずつ埋まっていきます。

仕事英語は、全部覚えてから使うものではありません。必要なものを覚え、使いながら身につけるものです。

まずは、次の仕事で使えそうな表現を一つ選んでみてください。

その一つが、自分の仕事英語を作る最初の一歩になります。