英語の本やメールを読めば、意味はわかる。単語も表現も、それなりに知っている。
それなのに、いざ自分で話そうとすると言葉が出てこない。メールを書こうとしても、いつも同じ簡単な表現しか使えない。
私自身、昔からボキャブラリーには比較的自信がありました。しかし、知っている表現の範囲に比べると、実際に使える表現の範囲はとても狭いものでした。
仕事で英語を使うたびに、「自分はこんなにボキャブラリーが貧しかったのか」と残念な気持ちになったものです。
知っている英語を、使える英語に変えるにはどうすればよいのか。
私が長年の仕事を通じて実感した答えは、とても単純です。
覚えた表現を実際に使い、「通じた!」という経験をすることです。
「知っている」と「使える」は、まったく違う
英語を見たり聞いたりしたときに意味がわかることと、必要な瞬間に自分の口や文章から出せることは、別の能力です。
知っている表現は、頭の中に保存されているだけです。仕事で使える表現は、必要な場面で取り出し、相手に伝え、次の行動につなげられる表現です。
たとえば、納期を確認する英文を読めば理解できても、自分が仕入れ先へ催促するときにすぐ書けなければ、まだ「使える表現」にはなっていません。
この差を埋めるのは、さらに多くの知識を集めることだけではありません。すでに知っている表現を、自分で使うことです。
英語学習で一番嬉しいのは、「通じた!」という瞬間
覚えた表現を実際に使い、相手が理解して返事をしてくれた。依頼したとおりに行動してくれた。会話が止まらず、次の話題へ進んだ。
この「通じた!」という瞬間は、本当に嬉しいものです。
単に正解を確認できるだけではありません。自分の英語で相手とつながり、仕事を動かせたという成功体験になります。
嬉しさを伴った表現は、教材で見ただけの表現より強く記憶に残ります。そして次に同じ場面が来たとき、以前より迷わず使えるようになります。
「通じた!」という実感が、借りてきた英語を自分の英語に変えます。
覚える・使う・通じる・定着する
私の英語習得法は、次の循環にまとめられます。
- 覚える:自分の仕事で使いそうな例文や表現を覚える
- 使う:メール、チャット、会議、会話などで実際に試す
- 通じる:相手の返事や行動から、意図が伝わったことを確認する
- 定着する:成功した表現を保存し、次回も使う
定着した表現は、次に使うときの迷いが少なくなります。何度も使ううちに、考えなくても自然に出てくるようになります。
英語学習の成否は、この循環を生活や仕事の中に作り、どれだけ回せるかにかかっていると思います。
「通じた」は、相手の反応で判断する
仕事では、先生が丸を付けてくれるわけではありません。しかし、相手の反応が答えになります。
- 質問に対して、必要な回答が返ってきた
- 依頼した作業を、相手が予定どおり進めてくれた
- 認識違いがなく、会議で次の判断へ進めた
- 催促したメールに、具体的な回答が来た
これらは、自分の英語が仕事上の目的を果たした証拠です。
反対に、見当違いの返事が来た、相手が動かなかった、質問が繰り返された場合は、何かが伝わっていない可能性があります。その経験も失敗ではありません。次に表現を改善するための材料です。
英会話レッスンは「使って試す場所」にする
以前の私は、英会話レッスンを、先生から新しいことを教えてもらうだけの時間とは考えていませんでした。
レッスンの前に、自分で表現を覚える。そしてレッスンでは、その表現を実際に使って通じるか試す。難しい仕事のメールがあれば、自分で下書きを作って持参し、きつすぎないか、内容が弱くなっていないかを添削してもらいました。
このようにすると、同じレッスン時間でも得られるものが大きく変わります。
現在はオンライン英会話のほか、AIとの会話練習も使えます。AIは何度でも練習相手になり、文法や言い回しも直してくれます。
ただし、本当の意味で「通じた」と確認できるのは、実際の相手が理解し、反応してくれたときです。AIで練習し、仕事で小さく試す。この組み合わせが有効です。
英語を使う機会は、自分で小さく作れる
仕事で突然、重要な英語会議に挑戦する必要はありません。まずは失敗しても影響の小さい場面から始めます。
- 覚えた表現を一人で声に出す
- AIと短い会話を練習する
- 定型的な確認を英文メールで送る
- Teamsなどのチャットで短い一文を使う
- 会議の最後に、決まった行動を一文で確認する
小さな「通じた」を積み重ねると、自信がつきます。その自信が、次の少し難しい場面へ挑戦する力になります。
表現を「知っている・試した・通じた」で管理する
覚えた表現を、すべて同じ扱いにしないことも大切です。ノートや表計算、メモアプリなどに、次の3段階で記録します。
- 知っている:意味を理解し、自分でも使ってみたい表現
- 試した:実際のメールや会話で一度使った表現
- 通じた:相手の反応から、意図どおり伝わったと確認できた表現
「通じた」表現は、自分専用の実務例文集に残します。日付、製品名、数量などを入れ替えれば、次回もすぐに使えます。
こうして増えた例文集は、一般的な教材より自分の仕事に合った、非常に価値のある財産になります。
たくさん覚える前に、一つ使ってみる
英語学習では、新しい教材、新しい単語、新しい動画を集め続けたくなります。しかし、知識を増やすだけでは、知っている英語と使える英語の差は縮まりません。
今日覚えた表現を、今日か明日、一度使ってみる。
相手に通じたら、それを記録し、もう一度使う。通じなければ、短く明確に直して再び試す。
覚える → 使う → 通じる! → 嬉しい → 記憶に残る → また使う
この循環を回すほど、英語は勉強する対象から、仕事で使える道具へ変わっていきます。
