外資系企業で働き、米国本社の上司と定期的に電話会議をしていた頃のことです。
知人に頼まれ、大学受験を控えた高校3年生に英語を教えることになりました。そこで、志望大学の過去問を一緒に解いてみました。
結果は、私の負けでした。
仕事では英語を使っているのに、大学入試の問題では高校生に負ける。少しショックでしたが、同時に大切なことに気づきました。
学校の試験で求められる英語力と、英語を使って仕事を進める力は、同じではありません。
仕事で英語を使えても、入試問題では勝てなかった
当時の私は、1社目の外資系企業に勤めていました。上司は米国本社におり、定期的に電話会議をしていました。海外の人と英語で仕事をすること自体は、すでに日常の一部になっていました。
それでも、受験英語の問題では高校生に負けました。
入試問題では、文法、語彙、長文読解、設問の意図を読み取る力を、限られた時間内で正確に使う必要があります。受験に向けて毎日その練習をしている高校生の方が強いのは、考えてみれば当然です。
一方、仕事で必要なのは、試験問題を解く能力ではありません。伝えるべき目的があり、相手がいて、最後には何らかの行動や判断につなげる必要があります。
学校英語と仕事英語で、評価される能力は違う
学校英語と仕事英語には、次のような違いがあります。
- 学校英語:問題に対して、決められた正解を出す
- 仕事英語:相手と認識を合わせ、仕事を前へ進める
仕事では、多少文法を間違えても、目的が正しく伝わり、必要な行動につながれば役割を果たせます。反対に、文法的に完璧でも、結論や依頼内容が曖昧なら、仕事は動きません。
会議で聞き取れなければ、聞き返す。単語が出てこなければ、簡単な言葉に言い換える。メールでは、相手にしてほしいことと期限を明確にする。こうした力は、試験の点数だけでは測れません。
学校英語が無駄だったわけではない
もちろん、学校で学んだ文法や単語が不要だという意味ではありません。それらは英語を理解するための大切な土台です。
ただし、土台を持っていることと、その上で実際に仕事をすることは別です。野球のルールを知っていても、試合で打ったり守ったりできるとは限らないのと同じです。
学校英語が苦手だった人も、そこで自分の英語力を決めつける必要はありません。仕事英語は、新しい実技科目を始めるような気持ちで学び直せます。
仕事英語は、自分の専門分野から始めるとよい
いきなり幅広い日常会話を完璧にしようとする必要はありません。自分の仕事なら、業務の流れや背景を日本語ですでに理解しています。使われる言葉や場面もある程度限られています。
たとえば購買の仕事なら、見積もり、納期、品質、在庫、支払い。管理職なら、進捗、問題、原因、対策、意思決定です。
まず、自分が毎日使う表現を英語で言えるようにする。これなら学んだ翌日から使えます。実際に使えば、相手の反応から正しかったかどうかがわかり、記憶にも残ります。
仕事で使える英語を身につける3つの練習
1.自分がよく使う場面を一つ選ぶ
報告、依頼、確認、催促、問題発生など、実際の仕事で頻繁に起きる場面を一つ選びます。
2.短く、誤解されにくい表現を覚える
難しい単語や長い文章より、誰が読んでも一つの意味にしか取れない英語を優先します。特にノンネイティブ同士では、格好よさより明確さが重要です。
3.実際に使い、通じた表現を残す
メール、チャット、会議、音読などで使ってみます。相手に正しく通じた表現は、自分専用の例文として保存し、次回も使います。
AIがある今こそ、内容を考える力が重要になる
現在は、AIが文法や自然な言い回しを直してくれます。学校英語に苦手意識がある人にとって、英語を使い始めるハードルは大きく下がりました。
しかし、何を報告するのか、相手に何をしてほしいのか、どこまで強く伝えるのかは、自分で判断しなければなりません。
英語の正確さはAIの助けを借りながら磨き、人は内容、判断、相手との関係に力を使う。これが、AI時代の仕事英語だと思います。
英語が苦手だった人へ
中学や高校で英語が苦手だった。テストの点が悪かった。文法用語を見るだけで嫌になる。
そうした経験があっても、仕事で英語を使えるかどうかは別の話です。私自身、英語を使って仕事をしていた時でさえ、大学入試の問題では高校生に負けました。
それでも、海外の上司や仕入れ先と仕事を進めることはできました。
目指すのは、試験で満点を取ることでも、ネイティブと同じ英語を話すことでもありません。自分の考えを伝え、相手を理解し、仕事を次の一歩へ進めることです。
学校英語への苦手意識は、いったん横に置いて構いません。自分の仕事で明日使う一文から、改めて始めてみてください。
仕事英語の学び方をまとめて知りたい方へ
私が海外駐在や留学をせず、独学と実務で英語を身につけた方法を、次の記事にまとめています。
